厚生労働省社会福祉推進事業で令和元年に行った調査結果では、BCPを策定しているか尋ねたところ、「はい」が 24.5%、「作成中」が 13.4%、 「いいえ」が 62.1%であった。約 6 割の施設がBCPを策定していなかったそうです。
「令和3年度介護報酬改定」にて、介護施設や事業所におけるBCP (業務継続計画)の策定が義務付けられました。基本的に介護サービスは、要介護者、家族等の生活を支える上で欠かせないものです。
昨今の自然災害や新型コロナウイルス感染症から、避難困難な利用者はもちろん、サービスを守る職員の生活を守らなければ二次災害も起こりえます。
介護施設や事業所は、大切な生活を守っていくためにBCP対策や防災対策を今一度見直すことが求められます。
1.BCP(業務継続計画)とは?
BCPとは、Business Continuity Planの頭文字を取った言葉で、日本語では「業務継続計画」と呼ばれます。
大地震等の自然災害、感染症のまん延、テロ等の事件、 大事故、 サプライチェーン(供給網)の途絶、突発的な経 営環境の変化 など不測の事態が発生しても、重要な事 業を中断させない、または中断しても可能な限り短い時 間で復旧させるための方針、体制、 手順等を示した計画 のことを業務継続計画(BCP)と呼びます。
期限・罰則
令和3年度介護報酬改定では、「3年間の経過措置期間を設けることとする。」と発表されており、2024年から義務が発生することになります。
2.福祉施設のBCP策定の状況
厚生労働省社会福祉推進事業で令和元年に行った調査結果では、BCPを策定しているか尋ねたとろ、「はい」が 24.5%、「作成中」が 13.4%、 「いいえ」が 62.1%であった。
約 6 割の施設がBCPを策定していない事が解りました。
防災計画を作成する主な目的は、「身体・生命の安全確保」と「物的被害の軽減」であり、その目的 は、BCPの主な目的の大前提となっています。 つまり、BCPでは、防災計画の目的に加えて、優先的に継続・復旧すべき重要業務を継続する、 または、早期復旧することを目指しており、両方の計画には共通する部分もあり密接な関係にあります。
(厚生労働省老健局 「介護施設・事業所における自然災害発生時の業務継続ガイドライン より)
3.何を準備すればよいのか?
ガイドラインに従って、ひな形に記入することで、一通りBCPを完成させることができます。
しかし、ひな形を埋めただけでは実効性が伴いません。BCP策定の真の目的は文書作成ではなく、有事に動けるようにすることです。
特に、昨今の自然災害は突発的で大きな被害も多く見受けられます。想定外の事態でも、即時に 判断し行動出来る様、日ごろの備えが重要です。
【参考】
厚生労働省「介護施設・事業所における業務継続計画(BCP)作成支援に関する研修」
4.過去の災害と衛生面(トイレ等)対策
BCP策定する上で、過去の災害の状況も重要な目安になります。実際のトイレ環境がどうであったのか是非知って頂きたいポイントです。
上水道・下水道・電気の
どれか1つでもストップすると…
トイレは使えなくなります!
また、災害時のトイレは、高齢者にとって多くの課題があります。
●和式トイレが多い (仮設トイレの8~9割は和式トイレ)
→足腰の弱い方、高齢者は和式トイレでの排泄が難しい
●衛生環境が悪く、感染症の流行など2次災害が起こりやすい
→水が出ない状況では手洗い、トイレ内清掃ができない
●汚いトイレは行きたくない、使用したくない
→東日本大震災、熊本地震時はトイレ環境が悪く、排泄をしない為に飲食を控えた為、エコノミー症候群になった方が多かった
5.災害時のトイレ対策
では、具体的にとのような対策を行えばよいのでしょうか?
トイレ対策の6W1H
①いつ → 災害・感染症の流行が起きる前
②どこで → 施設内・避難所などの生活拠点
③誰が → 介護事業者
④誰に → 職員、利用者など
⑤何を → 簡易トイレ、仮設トイレなど
⑥なぜ → トイレは我慢できない生理現象、2次災害を防ぐ
⑦どのくらい → 人数×回数×日数分を準備